近年大きく変わっている若者の働き方に対する考えや価値観、それに伴う企業の変化。しかし双方が課題を抱えている。地方経済を支える起業家達の実態を描いた『ヤンキーの虎』の著書・藤野英人さんにその実態を聞いた。AERA 2022年1月17日号の記事を紹介する。

【グラフ】地元就職を希望する学生の数はどう変わった?

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 間違いなく若者が地元志向、地方志向になっています。新型コロナウイルスの感染拡大から、リモートで働けるようになりました。諸条件がそろえば、自然環境がある地方で働きたい、暮らしたい人が多いと感じています。でも、自分のしたい仕事がないのが課題です。

 そんななか、若者の価値観が激変しています。京都府北部の丹後では、高校生たちが「SDGsが重要だ」と話しています。嵐が過ぎ去った後、海岸にプラスチックごみが山のように打ち上げられるので清掃ボランティアをしているのです。地方には環境破壊の現場が目の前にあります。高校生が「清掃活動をしたら、地域通貨がもらえるようにしよう」と言っています。

 そこでは、増えすぎたカキの貝殻が海洋汚染の原因になっています。その貝殻を使って、ビールをつくる若者がいます。利益を出しながら水質汚染を改善し、掛け算の効果を発揮しています。こうした社会起業家的な企業への就職が、今後は人気になっていくでしょう。

 もちろん地方にはもっと世俗的な経営者もいます。不動産、ガソリンスタンド、介護、カラオケなど幅広く事業を広げて、強い販売力を持つ人たちです。私は(上昇志向が薄く地元志向が強い)マイルドヤンキーを束ねる「ヤンキーの虎」と呼んでいます。

 地方経済が疲弊し、地方銀行など地場産業の雄たちの食い合いが始まるなか、虎たちは成長しています。とても勉強熱心で、SDGsをビジネスに取り入れようと強く意識しています。

 虎のほとんどは親戚や地元の仲間と事業をするのが特徴です。でも、地縁・血縁以外から優秀な学生を求める意欲的な虎も、少ないですがいます。そんな虎と学生とがつながれていません。

 そこで、山形県のヤマガタデザインという会社が「ショウナイズカン」という紹介サイトを作りました。企業やその土地での暮らしの魅力を伝えています。このサイトは山形にとどまらず、「トヤマズカン」など各地に広がっています。地元で働きたい人も、東京の大学を出てどこかで面白いことをしたい、成長したいと思っている学生にとっても、企業を探しやすくなりました。

(構成/編集部・井上有紀子)

AERA 2022年1月17日号