目新しいところでは、9月下旬に中国で2番目に大きい不動産会社・中国恒大集団の債務不履行問題が表面化した。中国版リーマン・ショックではないか、という懸念もある。まずはこの不安から解消しよう。SMBC日興証券の山本憲将さんは語る。
「中国は共産党一党体制で、国が経済をコントロールできるのではと言われています。来年には北京冬季五輪も控え、5年に1度の共産党大会で習近平国家主席が異例の3期目を目指しています。そんな大事な時に“中国発ショック”を起こしたくないのでは」
中国の不動産会社が持つ債務の多くは中国国内に限られていることからも、リーマン・ショックのような連鎖的金融恐慌に陥るリスクは低いという。
では、絶好調の米国株に死角はないのだろうか。
「インフレ懸念があります。米国をはじめ世界の中央銀行はコロナ禍で打撃を受けた経済や雇用を下支えするため、大規模な金融緩和を続けてきました。その副作用もあって物価上昇が深刻化しています。今後は元の経済に戻すため金融引き締めをしていかざるをえません。引き締めタイミングを誤ると経済が失速してしまいます」
■米国株ははずせない
松井証券の窪田朋一郎さんも、この論に賛成だ。
「コロナ禍の物流網の停滞や半導体不足、原油高もあり、米国では前年比5%を超える物価上昇が続いています。物価上昇に連動しやすい長期金利が仮に5%まで上昇すれば、米国株の株価は半値になってもおかしくありません。石油危機などで物価上昇が続き、金利が上昇した1960~70年代の米国株は冬の時代で、低迷していました」
とはいえ心配しすぎることはないという。山本さん、窪田さんともに「米国株は世界をリードするイノベーション(技術革新)が続いている国。今後も伸びる可能性は高い。長期の積み立てで米国株の投信をはずすのは、もったいない」というのが共通見解だ。(経済ジャーナリスト・安住拓哉、編集部・中島晶子)
※AERA 2021年11月22日号より抜粋