松尾:立った瞬間からもう全力で走っている。とくに小日向さんを見てると、舞台が好きなんだなってしみじみ思います。テレビで見せているような重厚な感じを一切捨て去ってやってますからね。

松:自分から率先して動いてはしゃいで、ハアハアしながら「体力落ちた」って落ち込んでますよね。でも、やらずにいられないところが素敵です。コヒさんと向き合うだけでなぜか泣きそうになるんですよ。中学生の頃からの知り合いなので、いろんな記憶が引っ張り出されて。でも、「たか子ちゃん、ホント変わんないね~」ってあまりにも繰り返し言ってくるから、ちょっと嫌になってきました(笑)。

松尾:松さんは神木君とは共演してましたっけ?

松:ほぼ初めてです。あらゆる仕事を経験している人というイメージがあるけど、舞台は松尾さんの「キレイ」以来の2作目だと聞いて意外でした。そういうイメージを持たれていることもすべてわかったうえで、粛々と生きてきた人なんじゃないかなって勝手に思って。彼が冷静でいてくれることで心強くもあり、大騒ぎしている周りの人たちをどんな目で見ているんだろうなって想像すると、もっと大騒ぎしたくなります(笑)。

——今回の舞台の大きな見どころの一つは、松の歌唱だ。松尾も「歌声ありきで出演をお願いした」というほど、松の歌には全幅の信頼を寄せている。

松:いや本当、私そういうプレッシャーに弱いんです……。

松尾:ははは!

松:実は歌とピアノが私の一番のコンプレックスなんですよ。

松尾:てまりのように、松さんも自分の鎖をちぎらないと。

松:そうですね。今できる最大限のエンターテインメントをお客さんにお見せしましょう!

(構成/編集部・藤井直樹)

AERA 2021年11月15日号