主演を務める松たか子、演出を務める松尾スズキという日本のエンタメ界を牽引する二人が、舞台「パ・ラパパンパン」で初めてタッグを組んだ。AERA 2021年11月15日号では、同舞台にかけるそれぞれの思いを語り合った。

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——東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで上演中の舞台「パ・ラパパンパン」が話題だ。あるクリスマスイブの夜。鳴かず飛ばずのティーン向け小説家・来栖てまり(松たか子)が、でたらめなミステリーを書き始めたことで事件が勃発する。担当編集者と共に物語世界と現実を行き来しながら事件の真相に迫る、笑いと謎に満ちたエンターテインメント作品だ。主演と演出家として初めてタッグを組んだ松と松尾スズキが、稽古場での様子を明かす。

松尾スズキ(以下、松尾):松さんは僕のむちゃぶりに近いような演出をさほど悩まずやってくれます。「とにかくやってみるぞ」精神がすごい。

松たか子(以下、松):ふふふ。

松尾:立ち姿が“舞台の人”なんです。演技を始めた瞬間からもう隙がなくて。それを意識せずにできるのがすごい。

松:へえ~、立ち姿ですか。

松尾:うん。役になりきるだけじゃ舞台では足りないんですよ。

松:今回、松尾さんの演出を初めて経験して、すごく面白いし勉強になります。松尾さんは、穏やかで謙虚なんですけど、ちゃんと怖い(笑)。私がうまくできていないことを見透かして、いろんなネジをキュキュッと締めてくれますよね。

■まさにブロードウェー

松尾:僕はアングラとかサブカルと呼ばれる孤島のような場所でずっと芝居を作ってきたけど、何十年かやるうちに、メインストリームの人たちとの仕事から新たな力が生まれることに気づいた。それ以来、エンタメをきちんと見るようになって、そこで松たか子という存在が浮かび上がってきたんです。演技がうまい、歌も歌える。顔も美しい。まさにブロードウェーなんですよ。こっちは中野ブロードウェイですけど。

松:ふふふ。

松尾:だから、もし松さんを迎えるなら、ちゃんとしたエンターテインメントを用意しないとダメだと思って、タイミングを計っていたんです。

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