さまざまな経験や興味を持つ人が一緒に暮らす中でとことん議論したり、刺激しあったり。そんな「学びと創造の場」としての学寮に、いま新たな光が当たり始めている。AERA 2021年9月20日号から。
【写真】コミュニケーションを重視し、共有スペースが多く設けられている
* * *
「海外のトップ大学の多くが全寮制です。寮を学びの場として重視しているのです。私自身、ハーバード大学留学中、実に多くのことを寮から得て、その環境を日本に再現したいと10年来考えてきました。それがやっと実現しました」
そう語るのは教育ベンチャー・HLAB代表の小林亮介さん(30)だ。今年4月、東京・下北沢に海外トップ大学の寮のエッセンスを再現したレジデンシャル・カレッジ「SHIMOKITA COLLEGE」を開校した。
「ハーバードの寮では、多様な文化や専門を持った人たちが寝食を共にするなかで学び合い、創造する文化が培われていました。フェイスブックは寮の仲間のやりとりから生まれ、映画『ラ・ラ・ランド』の監督と作曲家も寮のルームメイトでした。異なる興味やスキルセットを持った人たちが出会い、時間と空間を共にするなかからイノベーションは生まれるのです」(小林さん)
シモキタカレッジには現在、選考を経た1期生の約60人が居住。大学生だけでなく、社会人や高校生も同居する。
カレッジに足を一歩踏み入れると、カフェ風の食堂と吹き抜けのラウンジが広がる。カレッジ生は玄関から自分の部屋に行くのに必ずこの食堂を通る動線になっている。コミュニケーションや学び合いが生まれやすい仕掛けが随所に施されているのだ。生活面でも、居住エリアに応じて「ハウス」と呼ばれる10人ほどのグループに分けられ定期的に近況報告をし合う。全員がカレッジ運営に携わり、大学での専攻や興味に応じてレクチャーを立ち上げたりもする。
■人生の話も夜を徹して
早稲田大学国際教養学部1年の川崎健士朗さん(19)=写真上=はカレッジ生活をこう語る。