静岡県は地域一帯の病院と連携し、新型コロナウイルスによる死亡者数を相当に抑えている。その肝が「病院長会議」だ。圏域ごとに医療体制が異なる静岡県の病院をまとめるのは容易ではない。中東遠総合医療センター院長・宮地正彦は車を飛ばし、各院長に話をつけた。今また第4波が押し寄せ、緊張が高まっている。「スピードが勝負」と、患者の命を最優先に、行動し対応にあたる。
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新型コロナウイルス感染拡大の第4波が押し寄せている。全国で緊張が高まるなか、「静岡県」のデータが目を引く。人口100万人当たりのコロナによる死亡者数が32.7人と全国平均の半分以下で、一番多い北海道の約5分の1。島根県の0は別格にしても、人口250万人以上の13都道府県で静岡は最も少ない(4月7日現在)。
これはコロナ患者が早めに治療されているからではないか。病院の受け入れ体制と無関係ではあるまい。その陰の立役者が中東遠(ちゅうとうえん)総合医療センター(以下、中東遠)院長、宮地正彦(みやちまさひこ・65)である。
昨年11月下旬、政府が「勝負の3週間」と精神論を唱えていたころ、宮地は静岡県内の病院から病院へと車を飛ばしていた。コロナを診る15の医療機関のトップに「病院長会議を開こう」と提案して、賛同を取りつけるためだった。
当時、県内でも病院や介護施設で集団感染が発生し、パニックが起きていた。県は重症病床を34床と国に報告していたが、実際に使えるのは23床。その9割が埋まっていた。早急に病院長会議を開き、どの病院に何人の患者が入院しているかという情報を共有して、カバーし合わなくては救える命が救えなくなる、と宮地は奔走した。
「医療資源が豊かな東京と違い、地方は重症の治療ができる病院が少ない。病床の母数が少ないから、あと1人、2人、重症患者が増えたら、すぐに医療崩壊の状態でした。静岡の東部から西部に搬送された患者さんが着いて間もなく亡くなった。もう見過ごせない。オンラインの病院長会議の開設を提案しました。個々の病院長に電話や、直接、会いに行って口説きました。形だけではなく、具体策を決める会議にしようと呼びかけたんです」