三上丈晴(みかみ・たけはる)/1968年生まれ。月刊誌「ムー」の5代目編集長。「陰謀論は危険なものでもある。だからこそ、分析しなければいけない」と語る(本人提供)
三上丈晴(みかみ・たけはる)/1968年生まれ。月刊誌「ムー」の5代目編集長。「陰謀論は危険なものでもある。だからこそ、分析しなければいけない」と語る(本人提供)

 昔から巷にあふれる様々な「陰謀論」。今も、新型コロナウイルスのワクチンは「殺人兵器だ」という話から、自死した有名若手俳優は実は他殺だったという話まで、あらゆる陰謀説がはびこっている。こうした陰謀説を信じる人には、どんな傾向があるのだろうか。AERA 2021年4月5日号で取材した。

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 一体、どのような人が陰謀論に染まるのか。

「右でも左でもない普通を自認する人ほど陰謀論を信じやすい」

 そう話すのは、政治の観点から陰謀論研究をする京都府立大学の秦正樹准教授(政治学)だ。19年、全国1509人を対象に、ウェブで調査を行った。

 まず質問の中で、「政治に関することについて、私は他の多くの日本人と同じような意見を持っていると思うか」を尋ね、「そう思う」「ややそう思う」と回答した人を「普通自認層」、「そうは思わない」「あまりそうは思わない」と答えた人を「非普通自認層」に大別した。

 その上で、ネット空間で見受けられる典型的な「陰謀論」として、(1)「北朝鮮と日本の政府は実は裏でつながっている」、(2)「反安倍勢力と外国政府は裏でつながっている」の二つを挙げ、それぞれの説に同意するかを聞いた。その結果、全体では(1)を肯定したのが27%、(2)は17%だったのが、「普通自認層」では(1)が37%、(2)は41%もの人々が信じていた。一方「非普通自認層」では陰謀論的な言説を受容する傾向は見られなかった。秦准教授はこの結果をこう見る。

「自分の考え方が『普通』だと思っている人は、逆に言えば、自分の考え方と違うものはすべて『普通じゃない』と考え、『普通じゃない』陰謀論も信じやすくなってしまいます。『こんな普通なことがわからないお前が変なんだ』と言えば、何でもまかり通ってしまいます」

■好奇心旺盛だからこそ

 さらに秦准教授は「知識が高い人のほうが陰謀論を信じやすい傾向がある」と指摘する。

「一般的に、知識を高めた方が陰謀論に騙されにくいと思われていますが、多くの研究では逆の因果関係もありうると考えられています」

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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