不思議なこと、よくわからない情報に接すると、知的好奇心があればあるほどその先を調べていく。その際、推論には質のいい推論と悪い推論があり、質の悪い推論に行きつけば、陰謀論にハマることになる確率が高まるという。

「好奇心が旺盛だから本当の原因を知りたいと思う。それは政治においても、有名人の死亡においても同じです」

 陰謀論に陥らないためにはどうすればいいか。秦准教授は「個人で出来る対策はほとんどない」と語る。

「究極的に言えば、騙されないためには、知的好奇心を捨ててくださいということになります。実効的な取り組みとして、多くの陰謀論はネットで拡散するのでヤフーやグーグルなどインターネット上のプラットフォーマーである企業が、社会的責任としてネット上の陰謀論を積極的に削除する取り組みをもっと強化するしかないと思います」

 たかが陰謀論、されど陰謀論。40年以上にわたり「世界の謎と不思議」に挑み続ける月刊誌「ムー」の5代目編集長、三上丈晴氏(52)は、陰謀論を甘く見てはいけないと言う。

「陰謀論をバカにする風潮は怖い。逆に言えば、甘く見ていると陰謀論に取り込まれる」

 そのためには、免疫をつけることが重要と三上氏は言う。人は、その話が99%嘘でも1%でも真実があれば信じてしまう。その1%を見抜く力が必要だという。

「例えば、『ワクチンは殺人兵器だ』という陰謀論について、なぜそのような言説が出てきたのか真正面から受け止め、一つ一つ確認していく。そうすれば、嘘かどうか簡単にわかる。こうして免疫をつけることで、陰謀論に騙されることはなくなる」

(編集部・野村昌二)

AERA 2021年4月5日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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