“良い子”は演じない 芥川賞作家・宇佐見りんが執筆で大切にしていること 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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“良い子”は演じない 芥川賞作家・宇佐見りんが執筆で大切にしていること

古谷ゆう子AERA

 三島由紀夫賞を最年少で受賞、「推し、燃ゆ」で芥川賞を受賞した宇佐見りんさんがAERAに登場。作家を目指すきっかけとなった体験や、執筆中のルーティンについて語った。AERA 2021年3月22日号から。

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 自宅近くの小さな書店。純文学作品の取り扱いが多くはないその店で、自身の著書『推し、燃ゆ』を見つけた。

「芥川賞を受賞したこと以上に、書店の週間ランキングなどに並べられているのが不思議な感じです。まだ信じられないという気持ちもありますね」

「書く」という行為自体に面白さを感じたのは、幼稚園の頃。雪が降り、景色が白く染まっていくその様子を言葉にすると、母がそれを書き記してくれた。

「特別変わった内容ではなかったのですが、母は『いまのは詩みたいだね』と言ってくれた。何も考えずに発した言葉だったけれど、確かに詩のようになっていて、『あ、言葉にする』って面白いな、と感じたことは覚えています」

 小学生になると、習い事などと同じように「書くこと」が日常に組み込まれていった。「物語」に惹かれ、やがて「言葉」そのものへ興味が湧いた。

 執筆が進むのは朝目覚めてすぐの時間帯だ。頭はすっきりして、感受性が豊かでいられる。静かな場所でピアノ曲を聴いたり、お香をたいたりしながら書き進める。

「振り返って、お香の火が消えていると、『集中して書けていたんだな』と」

『推し、燃ゆ』は、漠然と抱いていた感情が的確に描写されている驚きと、言葉と言葉が化学反応を起こしていく面白さに満ちていた。

 大切にしているのは、「うそがないものを書く」ということだ。小説を通して“良い子”を演じるつもりはない。

「普段、話をしている時は相手を気遣ったり、見えを張ったりしてしまうこともある。でも、小説と向き合う時、言葉と向き合う時は『読者にこう思われるのが怖い』という気持ちは、一度はぎ取りたい。自分に向き合いながら書くことが、普遍性につながっていくのかな、と思います」

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2021年3月22日号


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