心配していた体育の授業も、事前に専科の先生が面談の時間をつくってくれ、直接話せたことで問題なく進んでいきました。

「成績表は、【できた】【できない】なら【できない】になったとしても、私はそれが全てではない気がします。彼なりの目標の到達度と頑張りで見ていきたいと思っています」

 足に障害のある子どもを受け持つのは初めてのため、試行錯誤しながらとおっしゃっていました。先生が装具を[スーパーシューズ]と名付けてくれたことで、子どもたちは「そういうものなんだ」と納得してからかわなくなったり、息子には難しい授業内容の時には独自の目標を設定してくれたりと、さまざまな配慮のおかげで6年間体育の授業を嫌がらずに過ごすことができました。

■先に状態を話せば相手も向き合ってくれる

 学校や他の保護者が接し方に迷う前に、こちらから先に状態を話せば相手もしっかりと向き合ってくれ、お互いにとって良い結果につながるのだと思います。

 入学まではあんなに硬く閉じられているように見えた扉も、入ることができれば、「肢体不自由がある」ということを周りが見慣れていくうちに、状況は柔軟に変化するのだと実感しました。

 息子がこの学校で初めての肢体不自由児なら、遠慮なくどんどん接してもらって、いつかハワイのように、偏見なくそこにいて当然と思ってもらえるような環境になっていってほしい。この頃の私は、それこそが私たちがここにいる最大の意味のような気がしていました。

 新年度を迎え、もし皆さんの周りにも、同じようにご自身やご家族の障害について話す方がいたとしたら、きっとものすごく勇気を出した行動であると思うのです。どうかその言葉を正面から受け取ってもらえたらうれしいです。

〇江利川ちひろ/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ

AERAオンライン限定記事

著者プロフィールを見る
江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

江利川ちひろの記事一覧はこちら