「カミさんは『つらくなったら夜中でも言うんだよ』と心配してくれていたけど、自分も感染したとわかった途端、怒りはじめました(笑)」

 普段から感染には十分注意を払い家でもアルコール消毒をするなど感染防止は心がけてきた。自分がどこで感染し、なぜ家庭内感染が起きたのかわからない。男性は言う。

「そもそも、熱が出たら気をつけることができるでしょうけど、飯を食うのも寝室も一緒で、トイレは共有。熱が出る前から気をつけるのは難しい」

 家庭内感染を防ぐにはどうすればいいのか。岡田教授は、「換気、手洗い、消毒」の徹底を呼び掛ける。

「家族と同居している時は、他の家族に看病してもらうことになります。その際、看病は1人で行いましょう」(岡田教授)

 例えば、4人家族で子どもが感染した時、看病者は1人に限定し、重症化リスクの高い妊婦や高齢者、基礎疾患のある人は避けることが大切だという。

「看病者は接触感染を防ぐため、ビニール製の手袋をはめ、レインコートを前と後ろ逆にして背中でボタンをとめるようにして全身を覆います。そして感染者は基本的に個室で過ごしてもらい、他の家族との接触はできる限り控える。お風呂やトイレなどを共用する場合は消毒と換気を十分に行い、お風呂は感染者が最後に入るようにしましょう。感染者が触れたものは必ず消毒してください」(同)

 岡田教授は、家族に陽性者が判明していなくても「家庭内にウイルスを持ち込まない習慣を徹底することが重要」と説く。高齢者や基礎疾患を抱えた人、受験生がいる家では、屋内でも家族全員がマスクを装着して過ごすのが理想だという。

「コートは室内に持ち込まず玄関に置き、帰宅したらすぐ手洗いと洗顔をしてください。できれば入浴して。特に手洗いはせっけんを泡立てしっかり洗い、ペーパータオルで水をよく拭き取りアルコール消毒をするとなお効果的です」(同)

 ただ、久住医師は言う。

「家族に感染者が出ると、隔離部屋を作っても家庭内感染を防ぐのは簡単ではありません。状況が許すなら、ホテルで療養したほうが感染を広げるリスクが小さくなります」

(編集部・野村昌二、川口穣)

AERA 2021年2月1日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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