「つまりインターバル速歩など、最大体力の70%程度の運動をすることで、病気の根本原因を除去することができるのです」(同)

 都内在住の大学教授・佐藤達郎さん(61)も、以前は1日1万歩を目標に歩いていたが、ほとんど効果を感じられず、3年ほど前にやめてしまった。しかし1年前、フェイスブックで「インターバル速歩がいい」と書いてあるのを見つけ、仕事の合間や移動などを利用して挑戦してみた。すると、目に見えて体調がよくなったという。

「以前は夜中に目がさめてしばらく眠れないということがあったのですが、今は毎日7~8時間ぐっすりです。僕は高血糖ですが、インターバル速歩を始めてから血糖コントロールができています。1日1万歩に比べれば心理的にすごく楽なんですが、足腰の筋力もアップして疲れにくくなりました」(佐藤さん)

速歩きをする際の速度は人によって異なるが、目標を持つ場合、「時速7キロ」が一つの目安になる。そう指摘するのは、アシックススポーツ工学研究所主席研究員の市川将さんだ。

「ウォーキングから徐々に速度を上げていき、自然と走り出すのは時速7~8キロ。時速7キロは、ギリギリ走り出さないくらいの速度です」(市川さん)

 一般的に、ウォーキングよりランニングのほうが、運動効果は高いとされている。しかし時速8キロ以上の速度では、ウォーキングのエネルギー消費量はランニングを上回る。時速7キロ歩行はランニングに近いエネルギー消費量がありながら、故障のリスクが低い究極の運動法ともいえる。ランニングは蹴り出しの際に体重の2~3倍の力が足にかかるが、ウォーキングであれば、足にかかる最大負荷は1.2~1.6倍程度。スポーツ初心者でも安全に取り組める。とはいえ、普通歩行の時速は4~5キロと言われ、時速7キロ歩行はそう簡単ではない。

「そもそも正しい姿勢ができていないと、速く歩くことはできません。たとえば、すり足のようにペタペタと足裏全体をつく歩きでは歩幅が小さくなる。速く歩けるということは、基本的な歩行姿勢はできているともいえます」(同)

(編集部・藤井直樹、ライター・井上有紀子)

AERA 2020年10月12日号より抜粋