大学入試改革の3本目の柱「主体性評価」のため国が進めてきたe-ポートフォリオが見送られる見通しだ。「英語民間試験」「国語・数学の記述式」に続き、改革はどうなるのか。AERA 2020年7月27日号の記事を紹介する。
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「大学入試に使われるからと、生徒が入力に費やしてきた時間やデータはどうなるのか……」
高校教員(36)は、やりきれなさを口にした。生徒が学習や部活動などの記録を蓄積し、大学入試にも活用できる電子システム「JAPAN e-Portfolio(ポートフォリオ)(JeP)」について、文部科学省が運営許可を取り消す方向で調整に入っていることがわかったからだ。JePは国の委託事業として始まり、2019年度から教育情報管理機構が運営を引き継いだ。20年3月末時点で、全国約16万5千人の生徒が利用しているが、中断されることになる。
入試改革では知識だけでなく生徒を多面的に評価することに重きがおかれ、一般選抜でも「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価するよう国が推進してきた。ただ、JePを入試に活用する大学が少なく、許可要件である財政的な安定性を満たせなかった。東京大学大学院教育学研究科の中村高康教授は言う。
「入試改革の3本目の柱である、主体性評価そのものがゼロになるわけではありませんが、前提としてきたシステムがなくなるわけですから、大きく後退するといえます」
JePについては、これまで複数の問題が指摘されてきた。
「民間企業であるベネッセコーポレーションのID取得が必要で、運営にも深く関わっていました。利益誘導や個人情報の扱いが懸念されました」(前出の高校教員)
前出の中村教授は言う。
「主体性は評価すべきなのか、どう評価するのか、といった本質的な議論がないまま、システムが先行しました。主体性評価は限定的にすべきです。高校生の生活があまねく入試の評価を意識したものになるのは健全とはいえません」