JePが頓挫すると、昨年見送られた「英語民間試験」「国語・数学の記述式問題」と合わせ、入試改革の3本柱の目玉システムが全て見送りになる。三つに共通することは何か。

「いずれも改革の理念が十分に吟味されないままスタートし、民間事業者に丸投げされました。専門家や学校現場が指摘してきた問題点にきちんと耳を傾けていれば、高校生たちを巻き込む前に食い止められたはずです」(中村教授)

 入試改革の前提が次々と崩れるなか、来年1月からは大学入学共通テストが始まる。「結局、センター試験と何が違うのか?」といった困惑の声も上がる。

 共通テストはセンター試験同様、形式的にはマークシート式だが、内容は大きく変わる。共通テストは「思考力、判断力、表現力」の測定に加え、「主体的・対話的で深い学び」を重視。課題を発見し解決法を考えていく場面を取り込んだ出題にも力を入れている。

 例えばプレテストでは、国語で複数資料を読み合わせる問題が出たり、数学などで長い会話文を通して答える問題が出題されたりした。しかし、国語の専門家からは「問われているのは、情報処理力で読解力でない」。数学の専門家からも「無駄な設定が邪魔して、純粋な数学の思考力が測れない」などの批判の声がかねて上がっていた。

 本来はこれら試験自体の中身の議論が重要だが、これまで改革の「3本柱」の議論が前面に立ち、陰に隠れがちだった。

「共通テストの出題内容には欠陥があると、多くの専門家が指摘してきました。いよいよ本丸の議論になりますね」(中村教授)

 テスト理論が専門の南風原(はえばら)朝和・東京大学名誉教授は言う。

「『思考力、判断力、表現力』は、学力の3要素の一つとされるが、それ自体、きちんとした学問的議論を経て設定されたものでない。定義も曖昧なまま、入試で具現化しようとして無理が生じている。長い対話形式の出題も、『主体的・対話的で深い学び』からの短絡的な発想ではないか。エビデンスに基づいた検証と反映が今後必要です」

(編集部・石田かおる)

AERA 2020年7月27日号