慶応義塾大学大学院教授 蟹江憲史(かにえ・のりちか)さん(50)/国連大学サステイナビリティ高等研究所シニアリサーチフェロー、政府SDGs推進円卓会議構成員。著書に『持続可能な開発目標とは何か~2030年へ向けた変革のアジェンダ』など(撮影/編集部・上栗崇)
慶応義塾大学大学院教授 蟹江憲史(かにえ・のりちか)さん(50)/国連大学サステイナビリティ高等研究所シニアリサーチフェロー、政府SDGs推進円卓会議構成員。著書に『持続可能な開発目標とは何か~2030年へ向けた変革のアジェンダ』など(撮影/編集部・上栗崇)

 SDGsが大切なのはわかるけど、いまいちピンと来ない──。AERA2020年4月6日号では、みなさんがきっと感じている「3つの疑問」に、SDGs研究の第1人者である慶応義塾大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授が答えます。

【できることをやろう!「地球の未来を救う33の習慣」はこちら】

●17のゴール全部に貢献しよう
(1)貧困をなくそう
(2)飢餓をゼロに
(3)すべての人に健康と福祉を
(4)質の高い教育をみんなに
(5)ジェンダー平等を実現しよう 
(6)安全な水とトイレを世界中に 
(7)エネルギーをみんなにそしてクリーンに
(8)働きがいも経済成長も
(9)産業と技術革新の基盤をつくろう
(10)人や国の不平等をなくそう
(11)住み続けられるまちづくりを
(12)つくる責任つかう責任
(13)気候変動に具体的な対策を
(14)海の豊かさを守ろう
(15)陸の豊かさも守ろう
(16)平和と公正をすべての人に
(17)パートナーシップで目標を達成しよう

*  *  *

●疑問(1)
「17のゴール全部」ではなく「一部だけ」に貢献するんじゃだめ?

 何もしないよりはもちろんいいですが、SDGsは17のゴール全てを実現しようとすることが重要です。互いに矛盾し合う要素をともに実現させようという努力から、イノベーションが生まれます。例えば企業が(8)働きがいも経済成長もだけを重視したのでは意味がなく、経済成長と他のゴールを両立させようとするからこそ、二酸化炭素の排出や環境への負荷を減らす技術が生まれます。

 新型コロナウイルスへの対応は象徴的です。(3)すべての人に健康と福祉をはもちろん最優先ですが、ジェンダーや雇用形態による不平等は起きていないのか、経済成長は無視していいのか。一人一人が17のゴール全てについて考えることで、何をするべきかが見えてきます。

●疑問(2)
大切なのはわかるけど、自分には縁遠いような気がして……。

 SDGsを「自分事」に感じるために必要なのは、目の前にあるものが「どこから来て、どこへ行くのか」を想像する力です。例えばこのテーブルは違法伐採された木材じゃないのか。過酷な児童労働で作られていないか。いずれ使い終わったらちゃんと分別してリサイクルされる構造なのか。それとも修理して長く使えるのか。

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