今季の全日本選手権で優勝した宇野昌磨。世界選手権でどんな戦いを見せるか(写真/朝日新聞社)
今季の全日本選手権で優勝した宇野昌磨。世界選手権でどんな戦いを見せるか(写真/朝日新聞社)

 今季フィギュア全日本を制した宇野昌磨が、チャレンジ・カップでも圧巻の演技で優勝した。今季前半は苦しんだが、新コーチを迎え、技術面でも精神面でも変化があったようだ。3月16日から始まる世界選手権でメダルを狙う。AERA 2020年3月9日号では、宇野の変化の裏側に迫った。

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 全日本王者の宇野昌磨(22)がオランダで開かれたチャレンジ・カップで優勝した。フリーは4回転3本を成功する演技で復調を見せ、新コーチ、ステファン・ランビエル(34)との最高の船出となった。

 今季一番の笑顔を見せた宇野。ここ3年苦労してきた4回転サルコーを綺麗に着氷し、4回転4本の攻めのフリーを一つのミスで滑り終える。最後のポーズを解くと、すぐにリンクサイドにいるランビエルを笑いながら振り返った。

「想像以上。練習でもあんな演技は一度もしたことがなかったので『ステファンどれだけ驚いているんだろう』と思って振り返りました」

 キス&クライでは、ランビエルが宇野の左手を高く掲げ「優勝」宣言し、師弟の絆をアピールした。宇野の変化は、技術にも精神面にも表れていた。

 今季の前半はコーチ不在のまま戦い、「スケートがつらい」と言って力を発揮できなかった。GPシリーズは8位と4位に終わり、今季前半戦の「世界一決定戦」であるGPファイナルには、進出すらできなかった。11月中旬からランビエルのチームに仮加入し、今年1月から正式加入。やはり「仮」と「正式」では、コーチの介入度が違う。この1カ月の間に、宇野は予想以上の大きな変貌を遂げた。

 まず正月早々、オーストリアで行われた合宿で着手したのは、フリーのブラッシュアップだった。振付師デイビッド・ウィルソンとランビエルが懇意であることから、ウィルソンがカナダから来て、熱血指導をした。

「僕が表現してほしいものを、ステファンと昌磨の2人にすべて伝えきることができました。素晴らしい時間でした。次の試合で、昌磨は別人のような演技をすることになるでしょう」

 とウィルソンは語った。

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