2020年度から始まる大学入学共通テストで導入を予定していた国語と数学の記述式問題について、萩生田光一文部科学相は17日、見送りを発表した。萩生田文科相は会見で、「受験生の不安を払拭し、安心して受験できる体制を早急に整えることは現時点において困難」と述べた。英語民間試験に続き、大学入試改革のもう一つの目玉も失った。
「これ以上、高校生を混乱させないでほしい」
12月6日、文部科学省前で行われたデモで高校生がマイクを握りそう訴えた。
この日、国語と数学の専門家、「入試改革を考える会」が、大学入学共通テストへの「国語・数学の記述式導入の中止を求める」署名を提出した。11月には当事者である高校生たちも4万筆の署名を文科省に渡している。
それらの声が届いたのか。
『国語教育の危機――大学入学共通テストと新学習指導要領』の著者で、共通テストの国語について問題提起してきた、紅野謙介・日本大学教授は決定についてこう語る。
「見送りや延期ではなく中止の判断が必要。50万人規模の記述式の採点の問題は、これからいくら時間をかけても解決のしようがない」
記述式試験では、事前にどんなに準備をしても、採点途中で必ず「出題者が想定していなかった解答」が出てくる。
「通常の入試では、その都度、担当者が協議し、場合によってはそれまで採点した答案をさかのぼって見直します。仮に2千枚を採点していて1999枚目にそうした解答が出てきてもです。しかし、50万人規模の入試でそれをすることは不可能です」(紅野教授)
採点はベネッセの子会社が担うことになっていたが、約8千人の採点者には学生のアルバイトが含まれる可能性も伝えられていた。人員をどう確保するのか。問題は漏洩しないのか。「公平・公正な採点が実現できるのか」。多くの不安と疑問の声が上がっていた。
とりわけ、受験生や高校教員にとっての最大の不安は「自己採点できない」ことにあった。受験生は共通テストの自己採点をもとに出願大学を決める。マークシートであれば、得点を確定できるが、記述式では難しい。都内の30代の高校国語教員は言う。