アレクサンドラ・トルソワ (c)朝日新聞社
アレクサンドラ・トルソワ (c)朝日新聞社

 ロシアのアレクサンドラ・トルソワ(15)やアンナ・シェルバコワ(15)ら、4回転ジャンパーが登場したことで、フィギュアスケート女子が大きな変化の時を迎えている。彼女たちのジャンプには、女子選手だけでなく男子選手も注目しているという。AERA 2019年11月25日号に掲載された記事を紹介する。

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 ロシアの女子選手たちの4回転成功に、羽生結弦(24)も注目している。スケートカナダ後にこう語った。

「彼女たちからはインスパイアされています。女子は筋肉の質や骨格が男子とは違うなかで、あれだけスムーズに4回転やトリプルアクセルが跳べる。魔法ではないので、ちゃんとしたパターンがある。自分も線が細いタイプで、また力を使わずに跳びたいという信念があるので、参考にしています」

 スケートカナダでは、エキシビションの練習でトルソワから「同時に4回転トウループを跳ぼう」と誘われた羽生。見事に2人でシンクロさせ跳んだ。

「トルソワは回転を始めるスピードがすごく速く、自分のタイプではないけれど、そういう強さもこれから高難度(4回転アクセル)をやっていくにあたって必要だと思った」

 この羽生の言葉には、急に女子が4回転を跳べるようになった秘密が隠されている。

 そもそも4回転を跳ぶには、従来よりも回転速度を速くするか、滞空時間を延ばすかになる。従来の男子の跳び方は、後者のアプローチだった。脚の筋力を使い高く跳ぶか、飛距離を出すか。見た目がダイナミックで加点が望めるが、空中での体重移動が大きく体幹の強さも必要。紀平のように体幹が強い選手はこちらのタイプだ。

 一方で、多くの女子は回転に着目したアプローチをとる。身体が細く、物理的に回転速度が速い。さらにこの2年で増えたのは、氷から完全に離れる前から氷上で回転を始めるものだ。この事前回転(プレローテーション)は、すべてのジャンプで回転力を起こすために行われるが、180度より多く回転すると減点される。回転を強くかける技術で、ギリギリの180度回転させてから跳び上がり、実質的な空中での回転角度を減らす。

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