道上さんは、慎之助コールの背景には、今シーズンで契約終了とされている「あの選手」を巡る阪神ファンの思いが隠されているという。

「鳥谷です。契約終了が正式発表の前にスポーツ新聞に漏れたことで、いろいろとごたごたがあり、メッセンジャーには行われた引退試合が、鳥谷には実現しなさそうですよね。思いっきり『鳥谷コール』で彼を送り出してやれない。鳥谷がこんな終わり方なのに、敵の4番は球団がきちんと礼を尽くして花道を作ってもらうはず。阪神ファンのモヤモヤ感が、阪神球団へのあてつけのような形で『慎之助コール』に出たのだと、私は思いますね」

 阪神ファンによる慎之助コールの裏には、実は鳥谷コールが隠れていた。単純な『慎之助ご苦労さんコール』ではなかったのだ、と道上さんは指摘する。

「タイガースファンの情の深さと、ジャイアンツとの最終戦で慎之助の恵まれた最後を見せられたことへの悔しさと。二つが混ざっていた、非常に深い、印象的なシーンだったと思います」

(文/編集部・小長光哲郎)

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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