当時27歳。周囲で結果を出し始めている同世代を見て、焦りもあったという。29歳までに「経営に携わる役割を担う」か「年収1千万円になる」と目標を決めていた。もともと自分で事業をやりたいと考えていて、会社に勤めながら、自分でウェブサービスを中心とした事業を起こした。

 年収は600万円まで上がった。自分の事業でも多少稼いでいたが、個人事業はたたみ、経営に必要なスキルを身につける「修業」に出ることに決めた。

 17年3月、リプロに転職。決めた理由は「人と規模とプロダクト」。創業3年目、従業員はまだ30人に満たなかったが、レベルの高い人がたくさんいた。年収は450万円とかなり減った。だが、気にならなかった。

「実力がないときに高望みしないほうがいいと思っていました」

 リプロが提供するサービスは、モバイルアプリの成長支援ツール。佐々木さんは入社後、カスタマーサクセスチームの立ち上げを担当した。クライアントはリプロのツールを利用して、アプリ内でのユーザー行動を分析し、マーケティングに生かす。

 カスタマーサクセスで重要なのはクライアントの継続率。佐々木さんのミッションは解約率を数%以下に抑えることだった。すべてのクライアントを訪問し、活用状況や課題をヒアリング。持ち前の突破力を生かし、課題を整理し、仕組みを作ってきた。1年後には解約率は目標水準に。3人だったチームも15人になり、佐々木さんはCCO(チーフカスタマーオフィサー)に。現在はリプロシンガポールのCEOとして奔走している。

「常にバリューを出さないといけない状況。ずっとしんどかったし、今もしんどいですよ」

 と佐々木さんはにこやかな表情を見せる。前職時代から一貫して、自分への投資を惜しまなかった。会社の先輩に100万円借金し、平日3日と週末1日、ウェブデザインの学校に通ったこともある。一時期下げた年収は現在840万円、個人事業も合わせれば1300万円と前職での稼ぎを優に超えた。

AERA 2019年9月30日号より抜粋