「たとえば『私よりもあなたの方がプロでしょ、だから教えて』と素直に私が言うことで、その人はそこが自分の強みなのだと自覚し、今よりももっとその分野を勉強してくれるんです」

 20代より30代、30代より40代の方が、間違いなく仕事が「面白く」なってきているという。

「受け手側の意見や会社の戦略なども冷静に余裕を持って見えるようになって初めて、『面白さ』に気づけるし、周りとの関わり方も変わっていきます」

 そのベースにあるのも、ポジティブシンキングだ。たとえば飲み会。多少の愚痴が出るのは会社員の常だ。でも少しの工夫でポジティブに変えられるという。コツは「出だしの一言」。

「嫌なことがあったとして、『今日こんなことがあってさあ、理不尽な……』と話し始めると、聞いている側にもネガティブな空気が漂ってしまう。でも最初に、『今日、すごい面白いことがあってさあ……』とか『普通の会社じゃちょっとないようなことだよね』とか(笑)、枕詞を変えるだけでポジティブにできる。私は負の意味で非日常なことがあっても、『面白い話のネタ帳』がたまったくらいに考えるようにしています」

 またある時、「最近、ネガティブなこと多いですよね」とある社員から言葉をかけられたという。たしかにトラブルもあった。でも河野さんはそれらを最悪な出来事だった、ととらえるのではなく、「その程度で済んだ」と考える。そうすることで、改善の糸口が見えるという。

「仕事においての『いい瞬間』って、文字通り一瞬です。『頂点』は続かない。そこをちゃんと理解する。だからこそ、『落ちている』ときをネガティブにとらえるのではなく、そこは『もう一回、上がるチャンスがあるということでもある』とポジティブに思うことにしています」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2019年9月2日号

著者プロフィールを見る
小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

小長光哲郎の記事一覧はこちら