楽天CMO・河野奈保(撮影/門間新弥)
楽天CMO・河野奈保(撮影/門間新弥)

 会員数は国内1億人以上、世界で約13億人の楽天。そのグループ全体のマーケティングを統括するCMO(チーフマーケティングオフィサー)を務める河野奈保さん(42)のモットーは、

「『すべてにおいて結構、運のいい人だ』と自分で思い込むこと。常に頭にあるのは『ポジティブシンキング』の大切さです」

 モバイルコマース事業を急成長させ、2013年に36歳で執行役員、17年に当時最年少で常務になったが、20代には行き詰まりを感じたこともあった。

「自分にだんだんスキルがついていくと、やりたいことへの思いが強すぎて、周りがそれについて来ていないことを客観視するのが難しくなっていました」

 転機となった分岐点はいくつかある。ポジティブシンキングについての何冊かの本に出合い、気づきがあったという。

「本人の考え方次第でいろんなものが好転していくのだと学びました。それ以降、自分の言葉の使い方や、行動、表情を意識するようになりましたね」

 変化した考え方とは、たとえば「人に頼る」ということだ。

「人って、『助けて』とSOSを送ると、思いのほかみんな助けてくれる。『インボルビングスキル(人を巻き込む力)』をつけるためにも、自分の弱みをあえて見せることで、仲間たちに補ってもらおうと考え始めたとき、仕事の仕方が変わりました」

 管理職となった30代には、「権限移譲すること」の難しさに直面、その意味に気づいた。

「権限移譲をしないと結局、組織の力は現状の自分の100%でしかない。権限移譲をして初めて、組織から100以上のものが生まれます」

 ただ、経験値やアウトプットの質が最も高い人が管理職になる以上、最初は自分より認める人が部下に少ないのは当然だ。

「そんな中で、信じぬいて、耐えて、賭けてみることが重要なんです。私が成長してきた過程でも、自分の持つスキル以上のものを課せられたときに初めて、ブレークスルーできた。自分が与えられたそんなチャンスを、同じく下の人にも渡していきたいと思えるようになりました」

 そのためにも、「その部下しか持っていない点を際立たせてあげる言葉」が重要だという。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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