二つめは、負けず嫌いなこと。遠征の合間に興じるカードゲームやビデオゲームは自分が勝つまでやる。

 三つめは、勝者のメンタルに重要な「したたかさ」。あるコンテストの決勝前のウォーミングアップ。大技を練習するライバルのそばで、堀米はさらに難しい技をやり始めた。それを見た選手はこのままでは優勝できないと感じたようで、本番は無理をして失敗する。相手の心理を揺さぶるわけだ。

「その後、雄斗は難度を下げ手堅く勝った。そういう頭の良さ、アスリートのインテリジェンスがある」

 これらの才能を、家庭環境が後押しした。

「思春期になると、お父さんは指導からサッと身を引いた。それがプラスになった」と早川は振り返る。

 スケートボードは9歳でプロが誕生することもある。子どもの頃からの早期教育が当然で、逆に親の過干渉が選手の成長を阻むケースも少なくない。だが自身もスケーターである堀米の父は、堀米が12歳のとき、早川に「こけても、こけても、雄斗は楽しそうに滑る。スケボーにハマった。もう大丈夫だなと思う」と明かしたという。

 今季序盤はやや調子を落としているようにみえるが、これから巻き返してくるだろう。高得点をたたき出す技がどんどん進化していくこの世界では、誰かが生み出した技をみんなが真似てそれを越えていく。そのトレンドをまさにリードしている堀米は、その都度自分を越えなくてはならない。

 東京五輪の目標を尋ねると、こう言った。

「僕がいかにスケートボードが好きで、楽しく自由に滑っているかを、みなさんに感じてほしい」

 メダル獲得よりも、スポーツの本質をつく言葉を口にする。遊びゴコロあふれる「ストリートのカルチャー」こそが、自分越えのエネルギーなのだろう。(ライター・島沢優子)

AERA 2019年8月5日号より抜粋