都立高校2校で民間の塾講師が受験の指導をする「進学アシスト校事業」が2019年度から始まった。民間の「受験のプロ」の参入で、生徒の教育機会格差をどこまで埋められるかが注目されている。
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6月下旬の土曜日。都立松原高校の教室には3年生15人ほどの生徒が集まり、現代文の授業を受けていた。
「国語は勉強の仕方がわからないという人が多いけれど、押さえるポイントがあります」
と言うのは講師。生徒に発言を促しながら、受験テクニックも織り交ぜて授業は進んでいく。
補講や土曜授業の一環にも見えるが、どちらでもない。教壇に立つ山下秀樹さんは、個別指導塾TOMASを運営するリソー教育の子会社、スクールTOMASの管理職講師だ。都立高校で、民間塾の講師が授業をする、今春始まった「進学アシスト校事業」の一環だ。
東京都教育庁は、都立高のうち、生徒の進路が進学や就職など多岐に分かれている「進路多様校」でこの事業を始めた。実施校は松原高校と福生高校。2、3年生(1~3月は1、2年生)が対象で、隔週で国語、数学、英語の3教科の授業を行う。
学校や保護者に金銭的な負担はなく、すべて都の予算で賄われる。授業は一斉講義形式だが、生徒個人向けの学習カルテを作成。進路指導室にタブレット端末を配置し、放課後などにオンラインでリアルタイムに質問できる設備も用意した。
事業を担当する東京都教育庁指導部の鈴木宏治主任指導主事は狙いをこう話す。
「進学から就職まで生徒の進路がさまざまな高校では、成績上位層を十分伸ばし切れていない現状があります。外部人材を活用して生徒の実力アップを図ると同時に、教員が授業を見学して、受験指導のノウハウを学んでもらいたいと考えています」
同じ都立高でも、進学校では受験のための指導ノウハウを学校側が蓄積している。一方、進路多様校では幅広い進路に対応する必要があり、受験対策は教員個人の力量に左右されがちだ。民間の塾のノウハウで、それらの弱点を補うことを目指すという。