中学受験での学校選びの指標となるのは偏差値だけではない。我が子に合った学校をどう選べばいいのか。専門家や経験者に見極めのコツを聞いた。
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過去の実績などから安心感がある伝統校に対して、比較的歴史の浅い新興校という選択肢もある。森上教育研究所の高橋さんは「新興校の方が新しいことにチャレンジしやすい雰囲気はあるようです」と話す。
例に挙げたのは、15年度に共学化して誕生した三田国際学園だ。「グローバル教育とアクティブラーニングを2本柱にかなりの人気校になっています」。英語以外の教科も英語で授業をする「イマージョン教育」も積極的に取り入れる。
「花まる学習会」の高濱代表が魅力を感じる新興校は広尾学園。
「伝統がある女子御三家に受かっても、広尾に行く生徒がいるほど。いったんブランドになれば人気に拍車がかかります」
この2校にはつながりがある。三田国際学園の大橋清貫学園長は、もともと広尾学園で改革に取り組んだ人物だ。高濱代表は「教育の世界で今、一番勢いがある人」。変化が続く教育界において、歴史の浅さから学校の「ウリ」になるところを確立させるため新たな取り組みを始めやすかったり、外部からの人材を登用しやすかったりするのも、新興校のメリットだ。
伝統校に魅力を感じる人たちもいる。都内に住む会社員女性(52)は今春、長女が1888年創立の香蘭女学校に入学した。小規模なミッションスクールで、卒業生には俳優の黒柳徹子さんや作家の上橋菜穂子さんらがいる。「土台がしっかりしている安心感があり、充実した図書室も本好きの長女のよき居場所になると思った」。
同じく長女が中学受験をした母親(41)は、人気の新興校をいくつか見学したが、ある学校では「やたら横文字を駆使してPRする姿にうさんくささを感じた」と打ち明ける。都内の伝統ある女子校に入学した。
首都圏中学模試センター取締役・教育研究所長の北一成さんは伝統校の魅力について、「実績や教育のノウハウから来る安心感」を挙げる。長年続く、難関大を想定した進路指導の方針があれば保護者は安心するし、豊富な卒業生の人脈が子どもの将来に有利に働くことも考えられる。