図版=AERA 2019年6月10日号より(イラスト:土井ラブ平)
図版=AERA 2019年6月10日号より(イラスト:土井ラブ平)
図版=AERA 2019年6月10日号より
図版=AERA 2019年6月10日号より
図版=AERA 2019年6月10日号より
図版=AERA 2019年6月10日号より

「オチのない話はしない」「人の話は一回転がす」「会話のラリーは続ける」──。いくつかの関西的コミュニケーションの鉄則とでもいうべきものがある。話者同士の協力を前提とする話し方だ。背景には何があるのか。大阪の岸和田生まれ、岸和田育ちでエリア誌「ミーツ・リージョナル」の編集長を長年務めた江弘毅(こうひろき)さん(60)はこう言う。

【関西弁への賛否の声はこちら】

「ビジネスにおいては本来取る、取られるじゃないですか。いうたらトランプ流ディール、ちゃうんです、われわれは。連れ、味方なんですよ、みんな」

 江さんによると、大阪人や京都人には「知り合いばかりでみんないいひとおもろいやつ」という倫理観があるという。

「いいひと」は金払いがよくていつもにこにこ。「おもろいひと」は料理がまずくても、サービスが悪くても怒らない。

「基本的に関西弁話者は顔と顔のつきあい。そこにビジネスが発生する。堅く言うと信用、もっというと仲間。お金をもらってものをもらって終わりじゃなくて、えんえんとつなげていくことが商売。それが信用というやつですわ」(江さん)

 ここで言う「信用」は、手間暇かけたコミュニケーションから構築されるもの。そこには細かな人間関係への配慮も発生する。元よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役で『謝罪力』という著書もある竹中功さん(60)はこう話す。

「敬語を上手に使うやつは交渉上手ですが、関西弁は敬語のグラデーションが多く、親にはこう、兄にはこうと相手によって使い分けることを子どもの頃から教わる。そこを横着しているとよそにいって失敗する。上手な人はそれを知っています」

 ただ、関西弁に悪いイメージを持つ人がいるのも事実だ。

「ある人が話された関西弁が失礼と取られるとしたら、それは方言の問題ではなく、相手への敬意や誠実さが伝わっていないからではないでしょうか」

 そう指摘するのは、リクルートマネジメントソリューションズの尾科(おしな)則子さんだ。

「『おそれいりますが』『失礼ですが』『ありがとうございます』といったビジネスの基本用語はイントネーションが違うだけで、関西でも関東でも共通です。そういった用語を要所要所で使えるかが大事です」

 関西弁は、丁寧に話しさえすればビジネスでも鉄板。“誠意の伝わる関西弁”、挑戦してみませんか?

(編集部・小柳暁子)

AERA 2019年6月10日号より抜粋