もう一つ、早く委員を済ませたいと思わせる大きな理由が、「6年生までに委員をやっていないと、“卒対”がまわってくる」というものだ。このみんなが恐れる卒対とは、卒業対策委員会のこと。仕事の内容は学校ごとに異なるが、卒業式のときに配る祝い菓子の手配や、卒業パーティーの企画運営などを担当することが多い。通常のPTA活動よりさらに中身が見えづらいため敬遠されている。

 だが、取材をしてみると「卒対は楽しかった」という声も意外と聞く。実は筆者も経験したことがあるが、比較的裁量が委ねられ、やりやすかった。

 PTA活動では前任者が前例踏襲を迫ることが硬直性やつまらなさの元凶となっているが、卒対の場合は、当然ながら前任者は100%卒業している。不要と思う仕事は、その年のメンバーの判断でなくすこともできた。目的も「子どもたちへのお祝い」「先生方へのお礼」と明確なので、必要性を理解しやすい。筆者の場合はたまたまメンバーに恵まれたこともあり、楽しい思い出となった。

 中学受験をする家庭には負担に感じられるかもしれないが、それ以外の人が卒対を敬遠する必要は特にないだろう。

 一方、特に共働きの親たちは感じるだろう。ただでさえ仕事と子育てで手いっぱいなのに、さらにPTAの仕事までやれと言われても、メリットどころか「損をする」としか感じられないと。

 千葉県の小学校で1年間委員をやった共働きの女性も、PTAのために何日も有休をつぶされたという。職場では「子どもが熱で休む」と言えば心配してもらえたが、PTAが理由ではなかなか理解が得られなかったと話す。

「PTAをやっても、よかったことなんて何もなかった」

 活動に時間をとられるうえ、個人の都合に関係なく参加を強いられるため、反感と相まって負担も大きく感じられる。

 だが、仕事に比較的時間の融通がききやすい人や、夫婦で協力体制が作れる家庭などの場合は、負担だけでなくメリットを感じることも意外とある。(PTAジャーナリスト・大塚玲子)

AERA 2019年4月8日号より抜粋