防火性能や遮音性の低さに加え、入居者からは「隣の部屋でテレビのチャンネルを変えれば自分の部屋も変わってしまう」とか「床と壁の隙間が大きすぎて、サワガニが入ってきた」といった証言も出ていた。同社は、違法建築について組織ぐるみではないとしているが、内部に詳しい人間はこう話す。

「下請けには徹底的に安く発注するからまともな工務店は引き受けない。それでも即金の現金払いに引かれて手を挙げる業者はあった。入居開始日が決まっているため間に合わせるためならなにをしてもいい、という雰囲気が現場にはあった。管理態勢などないに等しい」

 そして空室率の高さは、結果的にレオパレス自身を追い詰めている。部屋が埋まらなければ、実際に入ってくる家賃よりレオパレスがオーナーに支払う金額が上回ってしまう「逆ザヤ物件」になるためだ。

 空室率の上昇がレオパレスの経営を直撃したことがある。リーマン・ショック後に企業が人員削減を進めた影響を受け、2010年3月期と11年3月期に2期連続で赤字に陥った。この時期にレオパレスから一部の物件の契約を引き継いだ大手管理会社の幹部は「入居率が平均して30%台前半しかなく驚いた」という。

 今回の騒動でも空室の増加は避けられない。レオパレスは2月7日、現金預金が892億円、自己資本は1069億円(連結、18年12月末時点)と十分な水準にあると発表しているが、修繕費や入居者の引っ越しに伴う費用がどれだけかかるのかも不透明なままだ。

 激しい営業による急拡大と建築コストの削減。利益を生むはずの二つのツールが今、レオパレス自身に牙をむいている。(ライター・石田草光)

AERA 2019年2月25日号