「威張ってはいけない。小学校ではチャンピオンじゃないよ」

 練習環境を整え、知性を磨く。15歳の大躍進を支える二つの柱は、実はニッポン卓球界全体が目指してきたものでもある。

 01年から12歳以下のナショナルチームを結成し育成改革に着手した。一番の目的はバックハンドの強化だ。長くフォアハンドを武器にしてきた日本の弱点であり、中国に追い付くには小学生から強化する必要があった。

 さらに大会や合宿のたびに、指導者や保護者が子どもとペアで参加する講習会を実施。内容は体罰問題や栄養指導にまで及んだ。これらをメール通達やサイトにアップして終わらせる競技団体が多いなか、日本卓球協会はそうしなかった。「自立させる」「主体性を育む」といった新しい指導スタイルも浸透させた。JOCの関係者も評価する。

「どの競技も指導者教育に苦労しているが、卓球界は早くから指導者や保護者の研修に着手した。そこが画期的」

 とはいえ、育成に注力すれば、成人チームに投入される予算が減る。01年の世界選手権で男子団体は13位と低迷していたが、卓球協会は目先の勝利より未来を優先。この1期生に水谷がいた。彼らに託したバトンが選手の底上げへとつながった。今回のグランドファイナルでは、女子でもダブルスで早田ひな(18)・伊藤美誠(18)組が優勝した。

 卓球界の改革が始まった後の03年に生まれた張本は、バックハンドの技術を両親から直伝で教えられた。試合中のタイム時もコーチの話を聞くだけでなく「こうしたい」と意見を述べるなど、自立心も強い。

 東京五輪の時、張本は17歳。世界ランク1位で追われる姿を見てみたい。(文中敬称略)(ライター・島沢優子)

AERA 2018年12月31日号-2019年1月7日合併号