筑駒の全生徒のうち約6割が鉄緑会に通っている。同じく桜蔭生の約半数、開成生の約4割、灘生の約3割が鉄緑会に籍を置いている。

 超進学校の合格実績の背景に「鉄緑会あり」なのである。

 さらに鉄緑会の指定校になっているような中高一貫超進学校に圧倒的な合格者を出す中学受験塾が「SAPIX(サピックス)」である。

 たとえば開成の中学入試の募集定員は300人だが、18年のSAPIXからの合格者数は263人。同様に、筑駒では定員120人に対して85人、桜蔭では定員235人に対して164人。実際各校は募集定員よりも多く合格を出すが、それでも中学受験最難関校の合格者の半数以上がSAPIX出身者で占められていることになる。

 SAPIXから駒場東邦に合格した息子をもつ父親はこう話す。駒場東邦も鉄緑会の指定校の一つである。

「中学受験を終えた息子はすぐに鉄緑会に入りました。息子が通っていたSAPIXの校舎には、α(アルファ)と呼ばれる上位クラスの生徒が約40人いましたが、鉄緑会の初日に、そのうち10人と会ったそうです。息子とは別の曜日に鉄緑会に通っている生徒もいるでしょうから、かなりの確率で、SAPIXαクラス→鉄緑会の流れができているのだと思います」

 SAPIXから超難関私立中高一貫校に合格した生徒たちの多くがその後、鉄緑会に通うという事実。そして鉄緑会のカリキュラムをこなしきることができれば東大に余裕で合格できる。日本の受験システムにおける学力トップ層が通る“王道”がくっきりと見える。

 この状況は、「塾歴社会」といっても過言ではない。

 ちなみに、関西においては浜学園という中学受験塾が、最難関校の合格実績で他塾を圧倒している。東のSAPIX、西の浜学園という感だ。(教育ジャーナリスト・おおたとしまさ)

AERA 2018年9月24日号より抜粋