とはいえ、直訳版のままではここまで日本で浸透しなかった。人生ゲームは83年発売の3代目から、日本独自のマス目となる。「お歳暮」「お正月」といった日本風の味つけが始まり、「パイロット」や「アイドルスター」など子どもたちあこがれの職業も加わった。

 人生ゲームには今、王道の「スタンダード版」と、世相や流行を盛り込んだ「企画版」の2種類がある。最終的な資産額を競うというテーマは不変だが、性格は少し違う。スタンダード版は7~8年周期でリニューアルし、少しずつ改良が加えられている。一方、その間にほぼ毎年出される企画版は、時代に合わせた内容が大胆に盛り込まれている。例えば、2009年に売り出された「人生ゲーム極辛(ごくから)」。100年に一度といわれた不況を受け、「株が下がる」「失言で人気がガタ落ち」など、世知辛い世の中をリアルに再現した。

 どちらの版も、マス目には時代を映す言葉が盛り込まれてきた。「消費税」(89年)、「インターネット」(97年)、「ヘソ出しルック」(98年)、「ハレー彗星」(00年)、「萌え市場」(05年)、「ブラック企業」(14年)、「格安SIM」(17年)……。

 こうして今年7月、同じく50周年を迎えた集英社の「週刊少年ジャンプ」とコラボレーションして発売された企画版の「週刊少年ジャンプ人生ゲーム」まで、シリーズ全62作品、累計出荷数は1500万個(18年3月現在)を突破した。

 味わえるのは「非日常」だ。億万長者を夢見て、波瀾万丈の人生を疑似体験できる。

「よっしゃー!」

「やばいじゃーん!!」

 5月下旬、東京・高円寺にあるボードゲームカフェ「リトルケイブ」で、5人の若い女性が人生ゲームに夢中になっていた。

「大人になってからやるとリアルですよね」

 そう笑った女性が、テレビでボードゲームの特集を見て、懐かしくなって会社の同僚を誘ったのだという。何年かぶりに遊んでみて、子どものころを思い出すと同時に、「人生の浮き沈みも感じました」と言う。

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