お店のオーナーで、日本で数少ないボードゲーム作家でもある江見裕介さん(31)によれば、人生ゲームの最大の魅力は、誰でも遊べる点にあるという。

「誰でも遊べるゲームを作ろうとすると、どうしても単調になります。それを人生ゲームはマス目の配置で、序盤は緩やかに、中盤で盛り上がりをもってきてゴールさせている。つまり起承転結をつけてストーリーを持たせ、飽きさせない工夫をしている。全員が一つの映画を見ている感じを与えるのです」

「運」だけで展開するのも、人生ゲームの特徴だ。

 タカラトミーのトイゲーム企画課課長補佐で、人生ゲームのブランドプロデューサーを務める池田源さん(43)は言う。

「戦略性のあるゲームだと、例えば親子で遊ぶと親は手を抜かなければいけない。そうなると、親は真剣に楽しめません。人生ゲームは、ルールさえ覚えておけば後は運次第なので、親子でも対等に楽しめます」

 人生ゲームは世界59もの国と地域で発売されているが、毎年のようにオリジナルの新製品を発売し続けているのは日本ぐらい。先の松永さんは言う。

「通常、おもちゃは2~3年という短期間で売っている。しかしタカラトミーという会社は、永続的に楽しめるおもちゃを作ることにもこだわっている。同じくタカラトミーから発売されているリカちゃんも昨年50周年を迎えました。末永く愛されるおもちゃを作ろうというDNAが社内に根づいています」

 そうは言っても、今やスマートフォンなどのオンラインゲームが全盛の時代だ。なぜ“アナログ”な人生ゲームが、50年ものロングセラーになったのか? キーワードは「単純」だ。前出の池田さんは言う。

「根っこにあるゲームのシステムを変えてこなかったこと。例えば、ルーレットを回す行為も、お札のデザインもそこに描かれている人物も50年間変わらず、車にピンを刺す行為もずっと同じ。それが、世代を超えて安心して遊べることになったと思います」

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