いま、日本女子は平野美宇、伊藤美誠、早田ひなの「高3トリオ」ら若手の台頭が著しい。

「今までは年下ということもあって、自分のことだけやるのが仕事かなと思っていた。でも、年上になって自分自身もやらなきゃなという自覚が出た」。練習でも、積極的に若手選手に声を掛けるなどしている。

 東京五輪では、新種目として混合ダブルスも加わる。石川は昨年の世界選手権で吉村真晴と組んで金メダルを獲得した。悲願の五輪金メダルに向け、さらに心技体を磨いていく覚悟だ。(朝日新聞記者・前田大輔)

●柔道 松本薫
野獣が目指す「ママでも金」

「柔道と子育ての両立は忍耐。しんどいですけど、娘を見るとかわいくて仕方がない」。ロンドンで金、リオで銅と2大会続けてメダルをつかんだ柔道女子57キロ級の松本薫(ベネシード)が畳に帰ってきた。結婚、出産を経て、30歳での再出発だ。

 リオ五輪の後、帝京大学時代から8年間交際した1学年上の料理人の男性と結婚。昨年6月に女児を出産した。産後1カ月で本格的な稽古を再開し、今年6月、福岡県久留米市であった実業団の大会で実戦に復帰した。

「以前なら『始め』の声で相手に圧力をかけていたのに、最初は忘れてしまっていた」とブランクゆえの戸惑いはあったが、鋭い技のキレを見せ、2戦2勝。2戦とも開始約1分での一本勝ちだった。

 気迫あふれる表情で「野獣」の愛称が定着。1年10カ月ぶりの復帰戦でも、相手をにらみつける眼光は健在だった。しかし、勝負が終われば優しい母の顔に変化する。試合のため娘を東京に置き、初めて3日間も母子が離ればなれになったという。

「旦那に聞くと、泣いてばかりとか。それを聞いて涙が出そうで。早く帰って、ギュッとして、チューします」と集まった報道陣を和やかに笑わせた。

 娘を育てながらの競技生活は時間との勝負だ。朝は夫の出勤前にマウンテンバイクをこいで体力作り。娘を保育園に送り、家事をこなして、夕方からは帝京大を拠点に稽古する。だが遅くても午後7時半には保育園に迎えに行かねばならない。出稽古先も保育園の近くに限られる。

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