「やり残したことがあっても時間はくる。悔しいなと思う日はありますよ。でも娘の顔を見たら、やっぱり娘が一番だなって」。娘を寝かしつけ、その日の練習や課題をノートにつける。

「娘と一緒にいるべき時間を、自分のために使っている。そう考えると自分に対する甘えが減ったと思う」

 稽古に復帰したばかりの頃は大学生にも軽く投げ飛ばされた。腹筋や体幹など体の変化も感じた。「相手に技をかけられた時に踏ん張ったり、こらえたり、そういう動きがまだできていない」と明かす。

 常に新戦力が台頭し、激しい代表争いが繰り広げられる日本柔道界。女子57キロ級でも、昨年の世界選手権では22歳の芳田司(コマツ)が銀メダルを獲得。第一人者の松本も決して安泰とは言えない。

「自信はないし、差も感じてはいる。1%でも可能性があればかけてみたい」。五輪では谷亮子もなし得なかった「ママでも金」を目指して突っ走る。(朝日新聞記者・波戸健一)

AERA 2018年8月6 日号