羽生結弦 (c)朝日新聞社
羽生結弦 (c)朝日新聞社
羽生結弦の歩み(AERA 2018年7月23日号より)
羽生結弦の歩み(AERA 2018年7月23日号より)
羽生結弦の歩み(AERA 2018年7月23日号より)
羽生結弦の歩み(AERA 2018年7月23日号より)

 五輪2連覇を果たしたフィギュアスケート羽生結弦が、国民栄誉賞を授与された。受賞後の言葉からは、23歳の青年の並々ならぬ覚悟が感じられた。

【図表】羽生結弦 生まれた時からこれまでの歩み

 羽生は国民栄誉賞の表彰式後にこう語った。

「これからも私生活含めて、常にいろんなことに気を使って、後ろ指をさされないような生き方をしていきたい。この国民栄誉賞というすばらしい名に恥じないようなスケートをしていく」

「期待に応えられるだけの努力、技術、芸術を持っていなくてはいけないと強く思っている」

 元プロ野球選手の福本豊は、1983年に通算盗塁の当時の大リーグ記録938を超えて「世界記録」をつくった際に国民栄誉賞受賞を打診されたが、辞退した。後に、

「素行に自信がなかった。マージャンにパチンコ。酒も飲む、たばこも吸う。『立ち小便もできなくなる』と言うたのもほんまです」

 と語った。この賞を受けたからには、常に立派でなくてはならないという重圧があるかもしれないが、まだ23歳の羽生には、若者らしい自由な発想で、失敗を恐れないでやりたいと思うことをやってほしい。

 平昌五輪で金メダルを獲得した翌日の会見で、

「嫌われたくないって思うし、いろんなことをしゃべるほど嫌われるし、書かれるし、うそみたいな記事も出てくるんだろうなって思います」

 と漏らしたことも気になる。最近では、プライベートな時間や空間にいても、写真を撮られてしまうことを気に病んでいるとも聞く。

 時の人であり、注目される羽生を商品として消費しようとする動きがあるのは、ある程度は仕方がないのかもしれない。ただ、アスリートの価値の本質は、目標を掲げて挑戦し、失敗しても工夫や準備を続けてまた再挑戦をする、その姿勢や心構えだ。イメージや、人気と売れること自体が大切なタレントとは、少し違う。羽生が、イメージばかりを気にせず、自分らしさを押し殺さないようにいられる環境であれば、と願う。(文中敬称略)(朝日新聞オピニオン編集部・後藤太輔)

AERA 2018年7月23日号より抜粋