中高一貫の強みを生かし、全員参加型の海外研修を取り入れる学校が増えている。東洋大学附属牛久中学校・高校(茨城県牛久市)もその一つ。18年からは中3で実施していたオーストラリアでの語学研修に加え、中2でフィリピンでの語学研修も必修とした。遠藤隆二校長はその狙いをこう話す。

「私立学校に来る生徒は目標や価値観が近く、なかなか多様性を学べない。英語だけでなく貧富の差の大きいフィリピンでボランティアなどを経験させ、国際感覚も身につけてほしい」

 高1では一転、京都、奈良への文化学習に行く。

「海外では日本の伝統文化を聞かれることが多いが、答えられない。日本のことも勉強し、それを中3のときにオーストラリアで世話になったホストファミリーに報告するなど、中高6年の一貫したプログラムで、グローバル人材を育成します」

 高2ではシンガポールでの課題学習を予定している。生徒それぞれが深めた課題をアジアの学生と議論する。

「英語は下手でもいいから話す自信をつけさせるにはアジアだ。同じネイティブではないアジア人と議論するほうが、自分も負けまいと刺激になるんです。アメリカなどだと体も大きく圧迫感があり、どうしても自由に議論できない」(遠藤校長)

一橋大学国際教育センターの太田浩教授らは、3カ月以上の留学経験者4489人、非経験者1298人を対象に留学効果を比較・分析し、共著『海外留学がキャリアと人生に与えるインパクト』にまとめている。

「海外は日本のように講義を一方的に聞くスタイルではなく、自ら意見を発信し、プレゼンテーションなどで評価される。英語力は勿論だが、積極性や共感力、様々な項目で留学効果が表れる。結果として年収も留学経験者が大卒で非経験者の1.22倍、大学院卒で1.43倍と上回った。時間があるのは中高一貫の強み。海外研修は今後も増えていくだろう」(太田教授)

 ただ、「海外研修こそ格差が広がる。一部の私立学校だけではなく公立学校も含めて、プログラムを充実させる必要がある」と付け加えた。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年7月16日号より抜粋