週3回2~3時間、自宅訪問してくれる介護スタッフが、息子をリフトに乗せ車いすへと運ぶ(撮影/ユミコ・リトル)
週3回2~3時間、自宅訪問してくれる介護スタッフが、息子をリフトに乗せ車いすへと運ぶ(撮影/ユミコ・リトル)
障がいの程度に合わせた多種多様の車いすが、自宅用、外出用、学校用と地方自治体から無料で貸し出される(撮影/ユミコ・リトル)
障がいの程度に合わせた多種多様の車いすが、自宅用、外出用、学校用と地方自治体から無料で貸し出される(撮影/ユミコ・リトル)
元教会の壁面の石をリサイクルして造られた子ども部屋とバスルームの増築部分(撮影/ユミコ・リトル)
元教会の壁面の石をリサイクルして造られた子ども部屋とバスルームの増築部分(撮影/ユミコ・リトル)

 足腰に負担が大きい介護作業。英国では介護する側もされる側もうれしい器具が広がっているようだ。自宅で使う写真家のユミコ・リトル氏が報告する。

【写真】地方自治体から無料で貸し出される車いす

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 英国では3月になると、街のあちこちで水仙の花を見かける。春の兆しを知らせ、大空へと伸びゆくこの花のように、難病のため医療的ケアを受ける息子は4歳となり、日々成長し身体も丈夫になってきた。

 実は昨年、1階に子ども部屋とバスルームを増築し、新しい部屋に“最高の助っ人”が加わった。ベッドの真上、天井部分からレールがバスルームまで延びている。リモコンの付いた「ホイスト」と呼ばれる介護用リフトで、コウノトリの赤ん坊のようにつるされたわが子は、空中を飛ぶように移動し、バスルームへと運ばれる。彼をお風呂に入れる時も、車いすに運ぶ時も、もう私の腰やひざは痛まない。外出も以前より気軽にできるようになった。

 英国は介護する側のための施策も進んでいる。政府が1992年、介護する側の身体を守る目的でリフト使用を推奨するマニュアルを作成。それを機に、医療機関や一般家庭にリフトが少しずつ普及し始めている。

 リフトの使い方に時間をかけて慣れる必要はあるものの、使い慣れると看護や介護の重労働が大きく軽減する。わが子がお世話になっている子どもホスピスでも、彼が15キロを超えた頃にリフトの使用が義務付けられ、介護作業が大幅に軽減。負担が減ったためか、介護職に育児中や育児を終えた女性の姿が増えている。

 リフトは価格が700ポンドほど(10万円前後)で持ち運び可能な携帯用もあるが、2000年代半ばから、天井からつるすタイプが人気。高価だが使いやすいため、利用者が増えているようだ。

 英国は石やレンガで造られた頑丈な家が多いことも普及の一因だが、天井をしっかり造った建物なら、日本でもこの介護用リフトを使うことができるに違いない。(英国在住写真家・ユミコ・リトル)

AERA 2018年3月19日号