洋服や下着まで共有するほど仲のいい「一卵性母娘」も。「仲良しという言葉で回収されてしまうが、実は性愛的な快楽がある」と信田さん。斎藤さんは「『プラトニックな近親相姦』と評する海外の本も」(撮影/岡田晃奈)
洋服や下着まで共有するほど仲のいい「一卵性母娘」も。「仲良しという言葉で回収されてしまうが、実は性愛的な快楽がある」と信田さん。斎藤さんは「『プラトニックな近親相姦』と評する海外の本も」(撮影/岡田晃奈)

 なぜこうも繰り返されるのか。「毒母」との呼び名も出てくる母娘の関係性。大人になり家庭を持ったはずが、なお続くケースもある。そのウラには意外な要因も。関連著書がある臨床心理士の信田さよ子氏と精神科医の斎藤環氏が語り合った。

*  *  *

信田:私が母娘問題について提起した『母が重くてたまらない──墓守娘の嘆き』(春秋社)を出版したのが2008年4月。くしくもその翌月に(斎藤)環さんの『母は娘の人生を支配する──なぜ「母殺し」は難しいのか』(NHK出版)が出て、母娘問題が取り上げられるようになりました。

斎藤:「母の重さ」について、僕自身は本を書いたときも今もさっぱりわかりません。ただ、当時30代の女性編集者が「母娘関係について書いてほしい」と熱心に依頼してきて。

信田:私の本もまったく同じ。30代後半の女性編集者から「母親との関係で苦しむ女性たちをテーマに執筆してほしい」と。彼女自身も母の存在に苦しみ、その思いが依頼につながったのです。「団塊母」が「教育熱心」という形で娘を支配し、その期待に応え高学歴を経てメディアで仕事をするようになった娘たちが、一斉に声を上げ始めた。それが「母が重い」というムーブメントに火をつけたと見ています。

●20代、30代も共感 世代変わっても反復

斎藤:それから10年。変化は?

信田:あのあと当事者本も多く出版され、母娘問題はある種の市民権を得たと思います。さらに近年は「毒親」「毒母」がブームにすらなっている。そうしたサブカル的に語られる状況には正直危惧もあります。一方で、昨年、私が監修したNHKドラマ「お母さん、娘をやめていいですか?」が放送されると、「娘たち」からコメントがわんさかと寄せられて。20代、30代はSNSに、番組のHPには50代以上が「こういう問題をドラマで扱えるなんて初めて知った」と。人知れず苦しんでいる女性がまだまだたくさんいると知り、ショックでした。

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