ハリルホジッチ監督はこれまでずっとメンタルや球際の攻防が弱いと日本人の弱点ばかりを指摘してきたが、「何を長所にして戦うか」は、ほとんど言及してこなかった。おそらく、この状態でロシアW杯を戦ったとすれば、好結果を望むことは難しいだろう。

 W杯まであと半年。監督交代が現実的でないかといえば、実はそんなことはない。アジア予選で日本とも戦ったオーストラリアやサウジアラビアは本大会出場を決めた後、それぞれ監督が退任・交代しており、欧州でもセルビアが予選後に前監督との契約を解除した。日本サッカー協会が本気になれば、いくらでも監督交代は可能なのだ。

 ただ、日本のW杯での戦いを振り返れば、W年ドイツ大会や14年ブラジル大会は大きな期待を背負って臨んだものの、いざ蓋を開ければ1勝もできずに敗退している。対して、評価はどん底でまったく期待をされていなかった10年南アフリカ大会では、自国開催以外の大会で初めてW杯のグループリーグを突破するなど、皮肉にも前評判が悪いときのほうがいい結果が出ているという過去がある。

 南アフリカ大会を率いた岡田武史監督は大会直前、開き直りにも近い大胆な戦術変更と大幅な主力の入れ替えで大会を乗り切ったが、ハリルホジッチ監督に巻き返しの秘策はあるのだろうか。(スポーツライター・栗原正夫)

AERA 2018年1月1-8日合併号