「自分自身をパワーアップしたいし、自分の可能性をもっともっと探っていきたい。年を重ねるごとに新しいチャレンジは少なくなりますし、そこに足を踏み入れるのが怖くなります。そんな中で、自分の大好きな歌とお芝居二つを合わせたミュージカルというジャンルに挑戦できる。しかも、公演日程を聞いたらデビュー20周年の年で、17年7月はナナじゃないですか。どこまでもご縁を感じてしまいました(笑)」

●客席を包む「頑張れ」

 本格的な稽古を前に、自分なりの準備は始めている。

 声優は動かずに演じるが、今回は歌いながらせりふを話し、演技もしなければならない。

「せりふを言いながら体を動かすことからのスタートです」

 劇団を持って活動する声優仲間たちを先生に、役作りのためのトレーニングの仕方から学んでいるという。移動中は演技のメソッドやコツを復習する。

 歌の課題はずばり英語。

「英語に触れる機会は少ないので、苦手意識があります。発音に特化した英語の先生をお願いして毎日特訓中。お風呂の中でも『R』なら『ぐるるるる』と、犬のうなり声のような音を繰り返しています(笑)」

 自他ともに認める「陰練(かげれん)の鬼」。これまでも不得意なものは徹底的に陰で練習してきた。

「100%準備すれば、本番で120%の力を出せる」

 と信じているからだ。いまは、「キャロルを愛する気持ち」を、観に来てくれるすべての人に感じてもらいたいと突き進む。

「ニューヨークで観たとき、客席は『キャロル頑張れ』という空気に包まれた。ミュージカルでそんな経験、したことなかった。私もそう思ってもらえるキャロルを届けたい」

(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2017年6月5日号