45年末までに14万人が亡くなったとされる当時よりも頑丈な建物が増え、倒壊による圧死は大きく減る。それでも「建物内に窓ガラスや備品が飛散し凶器と化す。高層ビルでは避難階段に生存者が殺到し将棋倒し」「道路は建物や自動車の残骸で埋め尽くされ、火の手が迫り人々は逃げ惑う」とみる。

 自治体が国民保護計画を作る基準として政府が閣議決定した基本指針にも核攻撃の項目があるが、政府は、被害想定について、「攻撃類型、規模、環境などの前提で全く異なり、仮定を重ね想定するのは適当でない」(内閣官房)と示していない。

●その時避難できるか

 北朝鮮の度重なるミサイル発射で、着弾に備える動きは始まっている。政府は3月17日、日本海に面する秋田県男鹿市の漁村で、日本初のミサイル避難訓練を実施した。

 ノドン発射から着弾までは7~10分。政府が発射情報をつかみ、弾道を予測し、住民に防災行政無線で伝えるまで数分。残り数分で遠くへの避難は無理だ。とにかく近くの建物へ逃げ込み、周辺に落ちた時の爆風や高熱にさらされないようにする。

 訓練は一帯を通行止めにして住民110人が参加。校庭の小学生は校舎へ、掃除中の高齢者は公民館へ急ぐ。「男鹿半島西約20キロに落下」という訓練放送に、元漁師の加藤喜正さん(76)の表情が締まった。

 防災意識の高い集落だが、発射から避難完了まで7分前後とぎりぎり。立ち会った内閣官房幹部は、「他の自治体に訓練を働きかけたいが、都市部ではより丁寧な周知が必要」と話した。

 政府は18年度までに累計約2兆円を投じて「盾」のMDを強化する方針だが、北朝鮮のミサイル能力向上といたちごっこ。そこで、ミサイル施設をたたく「矛」の敵基地攻撃能力を持つべきだとの声が強まる。自民党のMD検討チームは「直ちに検討を」との提言書をまとめ、3月30日に座長の小野寺五典・元防衛相らが首相官邸で安倍晋三首相に手渡した。

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