火薬が詰まった通常弾頭の場合に参考になるのが、第2次大戦中にドイツが英国へ放った弾道ミサイルV2による被害だ。積める火薬はノドンに近い1トンになる。

 英BBCの報道によると、1300発以上で2724人が亡くなった。1944年9月にロンドンに落ちた1発は地面に直径10メートル、深さ2.5メートルの穴をうがち、3人死亡、22人けが、家6棟が壊れた。中小ビルなら崩れそうな威力だ。

 最悪のケースは、追い込まれた北朝鮮が核弾頭を積んだノドンを日本の人口密集地へと放つ場合だ。自殺攻撃に近い。

●核ミサイルの被害想定

 道下氏も参考にする被害想定がある。韓米の研究者2人が『ウォー・シミュレイション 北朝鮮が暴発する日』(2003年、新潮社)で示したもので、「米ヘリテージ財団の協力を得て、米国防総省が使用する軍事シミュレイションのソフトウェアを活用」と説明がある。

 04年5月31日午前8時、12キロトン級の核兵器(広島型は15キロトン、長崎型は21キロトン)が地表爆発したら──。天気や風向きもふまえた予測はこうだ。

 東京 爆心地・国会議事堂付近 死者42万3627人、全体被害者81万1244人

 大阪 爆心地・梅田付近 死者48万2088人、全体被害者88万1819人

 その時の表現は生々しい。

「2.5キロ以内に存在する人の90%以上はカメラのフラッシュのような閃光(せんこう)を見た瞬間に消える」「爆発で生き残っても、弾丸のように吹き込む大量のがれきで致命傷を負う」「永田町、霞が関、丸の内が壊滅すれば日本の中枢機能は一瞬で停止する」

 実は広島市も核攻撃の被害想定を07年に出している。国民保護法で自治体に求められる国民保護計画の策定にあたり、「原爆投下による惨害を受けた都市の使命」としてまとめ、ウェブサイトで公開している。

 想定は1945年当時と同じ爆心地で、8月の平日の昼間、晴れ。16キロトン級の核兵器が地上600メートルで爆発した場合、死者6万6千人、負傷者20万5千人、死傷率は46.4%にのぼる。

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