「親の感覚は間違っていないし、不安に思うのは悪いことじゃない。その声に聞く耳を持たない園は、保育士が忙しすぎたり、過度なプレッシャーがあったりすることが疑われます」

 前出の猪さんは、複数の園を経験している保護者と情報交換することを勧める。予告せずに早く迎えに行く、特に事故が起きやすい睡眠中や食事中の時間帯に様子を見に行くというのも手だという。

●認可外の園を「認定」

 神戸大学の北野幸子准教授(乳幼児教育学)は、設置基準を満たしているかなど「構造の質」だけでなく、日々どのような保育がされているかという「プロセスの質」、さらにその二つによって生み出される「育ちと学びの質」を見る必要があると指摘する。特に「プロセスの質」は連絡帳の内容や普段の会話にも表れてくるという。

「力量のある先生は子どもたちと話すときに否定語や指示、命令ではなく問いかけや誘い語を使う。親が園での様子を聞くと、一緒に遊んでいる子の名前がたくさん出てきて、子どもの気持ちを語ることができます」

 今回の「わんずまざー保育園」の問題点は、子どもの命を預かる場所で想定外の「不正」があったことに加え、自治体がお墨付きを与えた「認定こども園」が舞台だったことにある。

 認定こども園は待機児童対策の一つとして、幼稚園と保育園の機能を併せ持つ「いいとこ取り」の仕組みとして、国が推進してきた形態だ。幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型という四つのタイプがあり、「わんずまざー」のように、幼稚園や保育園の認可を持たない認可外の園が認定を受けるのが地方裁量型。16年4月時点で、全国に約4千ある認定こども園のうち、地方裁量型は60園と最も少ない。

「きちんとした監査基準が地方裁量型の園にはない。ほかの地方裁量型の園でも同様の問題が起こる可能性は十分ある」

 猪熊さんはそう指摘する。「玉石混交」とされてきた認可外保育園が、認定こども園の一部に入ってきているのだ。

 保育の質を保つのは一義的には行政の仕事だが、子どもたちを守るためには親も黙ってはいられない。

(編集部・金城珠代)

AERA 2017年4月3日号