全国の障害者団体や関係者たちが行ったアピール行動。障害者を排除する動きにNOを訴えた(撮影/写真部・小原雄輝)
全国の障害者団体や関係者たちが行ったアピール行動。障害者を排除する動きにNOを訴えた(撮影/写真部・小原雄輝)

「障害者は不要」と訴える容疑者が起こしたヘイトクライム。その主張に共鳴するネット上の声もあり、絶望が広がった。だが、そんな社会を変えようという動きもある。私たちはどう「共生」していけるのか。

 神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で元職員、植松聖容疑者(26)が入所者19人を殺害、27人に重軽傷を負わせた凶悪事件は、極めて重大な影響を社会にもたらした。幼児性の塊のような動機と、用意周到な計画の実行というアンバランスな犯行。それを英雄視して称えるようなネット上の投稿も目立ち、暗澹たる気分に拍車をかけた。

●殺されたのは俺たちだ

 事件から2カ月余。障害者たちは声を上げ、「共生」の意識は確実に浸透してきている。いつの世も人の心の闇に巣食う「分断」「差別」の思想と、私たちは決別しなければならない。

 植松容疑者は7月26日未明、勝手知ったる元職場に侵入、用意した結束バンドで当直職員を手際よく縛り、複数の刃物を手に46人を次々に殺傷、現場から逃亡したのち神奈川県警津久井署に自ら出頭した。

 今年2月には衆議院議長公邸を訪れ「私は障害者総勢470名を抹殺することができます」と犯行予告とも取れる手紙を守衛に預けたが、この情報などを元に相模原市が措置入院をさせたものの早期に解除、「ヘイトクライム」の予兆は幾重にも見過ごされた。

 逮捕後の取り調べでも一貫して「障害者は不要な存在」と主張する植松容疑者を、県警は殺人などの容疑で3度逮捕し、横浜地検は9月21日に鑑定留置を始めた。約4カ月間にわたって刑事責任能力の有無を調べることになる。

 この5日後の9月26日、全国の障害者団体や関係者の呼びかけで「相模原障害者殺傷事件に対する緊急行動実行委員会」が東京でアピール行動を行った。テーマは(1)19人ひとり一人に思いを馳せ、追悼する(2)「障害者はいなくなればいい」存在ではない(3)措置入院の強化、施設や病院の閉鎖性を高めることに抗議する(4)障害の有無によって分け隔てられないインクルーシブな社会をつくる。地域生活支援の飛躍的拡充を求める──。

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