全国から障害者ら約300人が参加し、追悼集会に続いて参加者が思い思いのプラカードを掲げ、日比谷公園から内幸町、銀座の目抜き通りを経て東京駅までを行進した。

「あの日殺されたのは俺たちだ」

「優生思想に僕達は負けない」

「人を『市場原理』で価値づけるな」

●「堂々と生きて」と発信

 アピール行動の呼びかけ人の一人でもある「全国手をつなぐ育成会連合会」(全国8ブロック、55団体)会長の久保厚子さん(65)は、事件当日に対外的な声明を出す一方、障害当事者に対しても「堂々と生きて」とメッセージを発信して障害者や保護者の精神的拠り所になった。

 長男(41)が最重度の知的障害者である久保さんは、大津市内の知的障害者生活施設「ステップ広場ガル」などを運営する社会福祉法人の理事長でもある。同施設に久保さんを訪ねた。

 利便性の良い場所ではないが、ひっきりなしに支援者や家族が出入りする。筆者を目に留めた入所者が「どんなごようですか」と声をかけてくれるなど、活気にあふれた施設だ。敷地内のグラウンドは地域に開放しており、地域のお年寄りに交じって入所者もゲートボールやグラウンドゴルフに興じている。

「きょうだいとしてどう言い表していいのか分からないほど腹が立つし、悔しい」

 事件後、長男の2人の妹は、久保さんにこうメールしてきたという。妹たちはともに健常者で独立し、福祉と関わりを持っている。下の妹は、機能重視のみになりがちな障害者の服装を、おしゃれでかつ動きやすいものにしたいと、デザインの勉強をしている。久保さんが施設運営に関わるようになったことも含め、家族全員が長男を中心に動いてきた。

●「いない」存在になる

 久保さんが、当事者にもメッセージを出そうと思ったのは、事件当日、障害者本人や家族から不安の声がたくさん届いたからだ。

「外に出るのが怖い」

「自分の生活支援をしてくれる人を信じていいのだろうか」

 こんなメールもあった。

「私たち、普段から遠慮がちに街を歩いているのに、こんなことをされて社会の中でどう暮らしていけばいいのですか」

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