そうした背景からか、将来は仕事と私生活のバランスを重視する層も多い。今回の調査でも私生活重視型がやや勝り、希望する診療科を聞くと、人気、不人気にくっきり表れた。

 1番人気は小児科。現役医師アンケートで将来性が低いとされた科だけに意外だが、「子どもを助けたい」といった、熱い思いが目立った。人を包括的に診るとして、国が進める総合診療医の人気も高かった。

●人生設計も現実的

 最も敬遠されたのは外科。「体力的にハード」(宮崎大6年)、「腰痛持ちには立ちっぱなしはつらい」(埼玉医科大6年)などの声があがった。

 そんな彼らは、人生設計でも現実的だ。ある都内私大に通う5年生の女性Bさん(23)は、周囲の医学生カップルが別れのラッシュを迎えている。

「付き合っていれば結婚が視野に入るし、先がないなら別れる。卒業や初期研修を待たず、5、6年生で結婚して、出産する人もいます」

 別れるのも、早々に結婚や出産を選ぶのも、これからのキャリアを見据えるがゆえだ。

 地方私大の5年生女性Cさん(23)は、温かい家庭を築きたいから、安定した職業として医師を選択した。卒業後はまず結婚し、子育てをしてから、3、4年後に初期研修をと考えている。

「バリバリ働きたい人は、私のまわりではまれ。結婚して子どもがほしいという人が多い」

 医学生の多くは目標に対し、合理的に考える傾向があるようだ。

 順天堂大学練馬病院で指導医を務める小松孝行医師(33)は、現状に懸念も感じている。

 医師として入る現場は、時には正解がない。前提や条件から自分で想定し、考える必要があるからだ。

「研修もマニュアル化が進み、全員がある程度、質を担保できるようになっています。が、効率を重視するあまり、肝心の思考力や人間力がおざなりになっていないか。どんなに優秀でも、医師一人でできることには限りがある。患者や医療従事者らと信頼関係を築く能力を身につけてほしい」

(編集部・澤志保)

■希望する科ランキング

1.小児科
 小さい頃から憧れていた(愛知医科大6年・男性 ほか多数)

2.総合診療科
 今後需要が高まるから(福島県立医科大1年・男性)

3.内科
 パートでも働き口が多い(大分大4年・女性)

4.外科
 移植手術に携わりたい(新潟大6年・男性)

5.麻酔科
 ひとり立ちが早い(海外大2年・女性)

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