第一三共は今年9月、アストラゼネカとの間で、アストラ社傘下の米国企業が生産するフルミストの国内での開発、販売に関するライセンス契約の締結を発表。最終の臨床試験を終えて国への申請準備を進めており、数年以内の商品化をめざしている。

 国内ではここ数年、毎年2千万本以上のインフルエンザワクチンが接種されているものの、依然として年間1千万人以上が罹患(りかん)し、昨年は1130人が亡くなった。前出の長谷川部長は、フルミストなどの経鼻ワクチンの「感染阻止力の高さ」を改めて指摘。普及によって、気軽に予防接種を受けられるようになったり、効果が表れやすくなったりして、インフルエンザにかかる人や重症化する人が減ることを期待しているという。

 フルミストは使用年齢が限定されているが、長谷川部長らはすべての年齢を対象に投与できる経鼻ワクチンも研究中だ。

「インフルエンザに感染した場合、重症化しやすい高齢者や乳幼児などハイリスクな層にも使うことができ、副反応をできるだけ少なくしたワクチンを開発したい」(長谷川部長)

「鼻にシュッ」で子どもの泣き声が消える日も近い。

AERA 2015年12月21日号