転機は東日本大震災。何人も知り合いが被災し、ボランティア活動にもかかわった。母親の死去も重なった。

「毎日が文化祭のような、テレビの仕事をする気分には戻れませんでした」

 そんなある日、ネットで大阪府の民間人校長の募集要項を目にした。正解のない時代には自ら課題を見つけて解決する力が求められる。そんな子どもを育てるため、頭の柔らかい人に来てほしい──。募集要項を自分なりにこう解釈し、「呼ばれた、という気がして」応募。面接では「普通の学校に奇跡を起こす」とアピールし、採用された。

「ゼロ・プラス・ワン」をキャッチフレーズに掲げ、ことあるごとに生徒に呼びかける。

 放送作家がアイデアを100個出しても、世に出るのは一つかもしれない。でも、いくら失敗したって、ゼロに戻るだけ。作家経験から得た人生訓だという。

「失敗を恐れず、まず一歩踏み出す勇気を。そんな意味です」

 任期は原則3年。限られた時間のなかで新しい企画を次々に繰り出し、教え子たちに「背中」を見せるつもりだ。

AERA 2015年11月16日号より抜粋