サイバーエージェント「捨てる」要諦は、(1)経営陣自らが決断すること(2)デメリットを気にしすぎずにまずは捨ててみること(3)厳しいことだからこそ明るくやること(写真:サイバーエージェント提供)
サイバーエージェント
「捨てる」要諦は、(1)経営陣自らが決断すること(2)デメリットを気にしすぎずにまずは捨ててみること(3)厳しいことだからこそ明るくやること(写真:サイバーエージェント提供)
異議があるときは「反論パネル」を掲げるなど、和やかな場づくりを心掛けた(写真:サイバーエージェント提供)
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異議があるときは「反論パネル」を掲げるなど、和やかな場づくりを心掛けた(写真:サイバーエージェント提供)

 固定観念、不要な部署や施設……。日本企業にはムダが多い。断捨離上手になれば、業績も空気も自然と変わる。積極的に「捨てる」作業を行っている企業を取材した。

 個人用のゴミ箱、日報、お中元……。今年6月、IT関連企業のサイバーエージェントは、これらを含む32のモノや制度などを捨てた。

 個人用のゴミ箱は「前時代的でオフィスの景観を損なう」から。日報は「書いていない人が罪悪感を感じる」から。お中元やお歳暮については、藤田晋社長がブログで「当社としては一旦やめます」と宣言した。

 6月、藤田社長と、7人の役員をトップにした約40人が対峙した。名付けて「捨てる会議」。藤田社長が、各チームから提案された「捨てる候補」をその場で判断する。モノでも制度でも施設でも、何でもいい。

 進め方も、遊び心満載だ。各チームから出された案には、捨てたときのインパクトなどを元に藤田社長が0座布団から3座布団までの点をつけた。

「これは3」「うーん、これは0」

 藤田社長の判断に沿って、運営担当がシールを紙に貼っていく。

「創業して17年。新しいモノを作り続けてきた会社だからこそ、デトックスが必要だった」

 参加した社長室室長の膽畑匡志(いはた まさし)さんは振り返る。

 膽畑さんを含む6人のチームは、会議の1カ月前から社内チャットや会議で議論を重ねた。46の「捨てる候補」の中から、10個を選んで会議に臨んだ。その一つ、「合宿施設」は、稼働率が低いとして不要とされ、3座布団をゲットした。

 ちなみにこの会議では、1座布団以上はすべて「捨てる」のがルール。それなら、あえて点をつけなくてもいい気がするが……。膽畑さんはこう説明する。

「妥当と判断されたら、事業や子会社を“捨てる”可能性もあった。とても厳しい作業だからこそ、明るくすることが大切だったのです」

 捨てる、捨てないの2択だと盛り上がりに欠ける。10点満点ではスコアが分散して競争になりづらい。「1点」ではなく「1座布団」にしたのも全て、楽しめることを意識したという。

AERA 2015年10月12日号より抜粋