1980年代後半の雑誌のDINKS特集、当時は最先端のライフスタイルだった(撮影/編集部・鎌田倫子)
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1980年代後半の雑誌のDINKS特集、当時は最先端のライフスタイルだった(撮影/編集部・鎌田倫子)

 子なし共働き夫婦を意味する「DINKS」。かつて金銭的余裕がある夫婦として憧れの存在だったが、それも今となっては過去の話。変化の背景には一体何があるのか。

 約四半世紀前、女性週刊誌やファッション誌で新しい夫婦像として「DINKS」という流行語が躍った。ダブルインカム・ノーキッズの略で、子どもがいない共働きの夫婦を指す。時間的にも金銭的にも自由で、ゆとりある生活が送れる生き方だとして、憧れの的になった。

 それが今や、雑誌で取り上げられるのは、「イクメン」や「ワーママ」ばかり。なぜ、DINKSの地位は低下したのか。

 まず、1980年代後半にこの言葉がはやった背景として、コラムニストの犬山紙子さんは、「旧世代への反発があったのでは」と指摘する。男女雇用機会均等法の施行直後で、「女は家庭に入るべき」という古い価値観へのアンチテーゼだったのかもしれない。当時の雑誌をめくると「家事は平等に分担」「好きなだけ仕事に打ち込む」などの文言が並ぶ。

 それが次第に働く女性が増え、いま権利を声高に叫ぶ必要性がなくなった。それと共にDINKSも影が薄れてきたのかもしれない。

 経済環境の変化も影響がありそうだ。新生銀行の調査によると、会社員の小遣いの額はバブル期をピークにして右肩下がりの傾向が続く。2014年の月額の小遣いは既婚者男性で、子ども「あり」が3万4963円、「なし」が3万7617円と、その差は約2700円。大差はなく、DINKSといえども現状では生活にゆとりはないようだ。憧れられなくなった理由がそこにあるのかもしれない。

AERA 2015年4月20日号より抜粋